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初心者でもわかる青色申告のための複式簿記の付け方・考え方

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◆青色申告に必要な複式簿記の付け方や領収証等の保存について

個人事業主は前年1年間の所得や税額を翌年の2月16日~3月15日までの間に所轄の税務署などに確定申告する必要があります。
それが確定申告で、確定申告には白色申告青色申告の2種類があり、一般的に白色申告より青色申告のほうが得といわれています。
ここまでは確定申告をしたことが無い人でもうっすらと知識としてご存知の方も多いのではないでしょうか。

青色申告がお得であるのは、青色申告をすることで税金の控除が受けられるからです。
その代わり白色申告よりも詳細な帳簿の記帳が必要になります。また、その帳簿の種類により受けられる控除の額が違ってきます。
10万円控除65万円控除の2種類になります。その差は大きいですね。
せっかくきっちりと帳簿付けもするのであれば大きな65万円控除を受けたいと考える人が多いかと思います。

ここでは青色申告の記帳方法や、保存が必要な帳簿や書類などを見ていきましょう。

複式簿記は複雑そうだと不安な方、身構えてしまう方も多いかもしれませんが、ポイントになる書き方、考え方をしっかり押さえればさほど大変ではありません。

きっちりつければちゃんと辻褄の合うようになっていますので。じっくり取り組んでいきましょう。

青色申告する上でのポイントは

・複式簿記で必要な帳簿を揃えないと65万円控除は受けられません
・必要な帳簿のメインは「仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳」
・現金や預金など何で取引したかもしっかり記帳
・計上する日はお金ではなく、モノやサービスが動いた時というのがポイント

以上の点です。それでは青色申告と複式簿記の付け方を見ていきましょう

 

◆1.白色申告と青色申告10万円控除、65万円控除の違い

確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があり、青色申告はさらに10万円控除と65万円控除の2つに分かれることは冒頭でもいいました。
まずは白色申告と青色申告の違いを見てみましょう。

大きな違いは、青色申告の特典が使えるかどうかです。青色申告の特典の主なものは、次のものがあります。

  1. 青色申告するだけで控除が受けられる「青色申告特別控除」

  2. 家族への給料を経費にできる「青色事業専従者給与」

  3. 赤字を翌年以降3年間繰り越せる「損失の繰り越し」

  4. 取得価額30万円未満の固定資産を一括で経費にできる「少額減価償却資産」

上記の特典は10万円控除、65万円控除にかかわらず、青色申告をしている事業主すべてが受けることができます。では、10万円控除、65万円控除とは何でしょうか?

それは「青色申告特別控除」の額が10万円か65万円かの違いです。

例えば所得税率が10%とすると、65万円控除のほうが所得税55,000円の節税になります。青色申告特別控除の額が10万円控除なのか、65万円控除なのかで記帳、保存する帳簿などが異なります。

 

◆2.記帳と帳簿等の保存はどの申告であっても義務です

そもそも個人事業主は、1年間の所得や税額を正しく計算し申告するために日々の取引を帳簿につけ、その帳簿や証拠となる書類を一定期間保存する必要があります。

記帳とは、売上や仕入、経費などの取引を帳簿に記載することを言います。

帳簿書類の保存とは、帳簿と書類の保存のことです。

帳簿とは取引を記載した帳面のことで、書類とは請求書や領収書などのことです。

これは白色申告であっても青色申告の10万円控除、65万円控除のどれであっても義務づけられていますので必ず行うようにしましょう。

ただ、帳簿の付け方のなどの求められるものがそれぞれ違いますのでそこをしっかりと把握しましょう。

 

◆3.65万円控除を受けるための記帳方法と帳簿書類の保存期間

ここでは最大の控除額である65万円控除を受けるためには、帳簿にどのような内容を記載するのかまた、どのような方法で記帳するのかを解説します。

1) 記帳内容

売上や仕入、経費などの取引は帳簿に記載しなければなりません。65万円控除の場合は原則、複式簿記で帳簿つけします。以下のような内容を記載します。

・いつ…取引の年月日

・誰に…売上先や仕入先などの名称

・何を…販売や購入した商品名など

・何を使って…現金や普通預金などの取引手段

・いくらで…その金額

 

2)記帳方法

複式簿記は「何を」「何を使って」をきちんと記帳する処理方法です。つまり何の目的でお金が動き、そのお金が何の取引手段(現金や普通預金など)を使っているのかを記帳します。

例)1月10日にA商店に商品400,000円を現金で販売した
   2月20日にB商店から仕入商品200,000円を普通預金で買った
  3月20日に本棚80,000円を現金で買った
  4月10日に水道代10,000円を普通預金で支払った

複式簿記の記載例は以下のとおりです。

日付

借方科目

金額

貸方科目

金額

摘要

1月10日

現金

400,000円

売上高

400,000円

A商店

2月20日

仕入高

200,000円

普通預金

200,000円

B商店

3月20日

消耗品費

80,000円

現金

80,000円

本棚

4月10日

水道光熱費

10,000円

普通預金

10,000円

水道代

複式簿記とは売上や仕入などの損益の科目だけでなく、現金などの資産や借入金などの負債の科目も記載する方法なのです。

 

3)帳簿書類の種類と保存期間

では次に、青色申告の65万円控除を受けるために作成、保存しなければならない帳簿書類とその保存期間をみていきましょう。帳簿書類とその保存期間は以下のとおりです。

帳簿書類 保存期間
帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など 7年
書類 決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など 7年
現金預金取引等関係書類 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など 7年(※)
その他の書類 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) 5年

※前々年分所得が300万円以下の場合は、5年でよい

 

帳簿は、複式簿記という記帳方法で売上や仕入、経費などの取引を記載したもの。書類は帳簿に取引を記載する際の元となったもので、年度末の棚卸をしたときに記載する棚卸表や、請求書・領収書などです。

65万円控除と10万円控除では保存する帳簿が異なるため、帳簿の主なものについて詳しく見ていきましょう。

 

①仕訳帳

1つ1つの仕訳を日付順に借方、貸方で記載した帳簿。上記の複式簿記の記載例が仕訳帳の様式です。

②総勘定元帳

すべての取引を勘定科目ごとに、日付順で記載したものです。その勘定科目の動きと残高などを確認します。例えば次のような様式です。

                現     金

月日

相手勘定科目

摘要

借方

貸方

残高

1

10

売上高

A商店

400,000

 

400,000

3

20

消耗品費

本棚

 

80,000

320,000

 

 

 

 

 

 

 

 

③現金出納帳

現金を使ったすべての取引を日付順で記載したものです。現金の動きと残高などを確認します。例えば次のような様式です。

               現 金 出 納 帳

月日

相手勘定科目

摘要

入金

出金

残高

1

10

売上高

A商店

400,000

 

400,000

3

20

消耗品費

本棚

 

80,000

320,000

 

 

 

 

 

 

 

 

④売掛帳

売掛金を使ったすべての取引を得意先ごとに、日付順で記載したものです。得意先ごとの売掛金の動きと残高などを確認します。

売掛金について少し詳しく解説しておきましょう。

唐突ですが、売上はいつの日付で計上すべきでしょうか?

答えは、商品を購入者に引き渡した時です。

 

現金商売の場合は現金と引き換えに商品を引き渡すことが多いですが、例えば卸売業などは、商品を引き渡した日と代金の入金日が違うことが多いです。

「そのとき商品を引き渡したが、代金は未回収だよ」ということを表す勘定科目が「売掛金」です。

例)1月20日 A商店に200,000円の商品を引き渡した。代金は翌月振り込まれる。

2月20日 上記商品代金200,000円がA商店から普通預金に入金された。

仕訳帳では、以下の仕訳です。

日付

借方科目

金額

貸方科目

金額

摘要

1月20日

売掛金

200,000

売上高

200,000

A商店

2月20日

普通預金

200,000

売掛金

200,000

A商店

 

 

 

 

 

 


売掛帳では、例えば次のような様式です。

               売 掛 帳

A商店

月日

相手勘定科目

摘要

売上

入金

残高

1

20

売上高

C商品の販売

200,000

 

200,000

2

20

普通預金

販売代金の回収

 

200,000

   0

 

 

 

 

 

 

 

 

⑤買掛帳

買掛金を使ったすべての取引を相手先ごとに、日付順で記載したものです。相手先ごとの買掛金の動きと残高などを確認します。買掛金は売掛金の逆で支払いのケースです。

仕入は売上の逆で商品の引き渡しを受けた時です。

商品の引き渡しを受けた日と代金の支払日が違う場合に、「商品の引き渡しを受けたが、代金は支払未だよ」ということを表す勘定科目が「買掛金」です。

例)1月10日 B商店から100,000円の商品を購入した。代金は翌月支払う。

2月10日 上記商品代金100,000円をB商店に普通預金から支払った。

仕訳帳では、以下の仕訳です。

日付

借方科目

金額

貸方科目

金額

摘要

1月10日

仕入高

100,000

買掛金

100,000

B商店

2月10日

買掛金

100,000

普通預金

100,000

B商店

 

 

 

 

 

 


買掛帳では、例えば次のような様式です。

               買 掛 帳

B商店

月日

相手勘定科目

摘要

支払

仕入

残高

1

10

仕入高

D商品の購入

 

100,000

100,000

2

10

普通預金

購入代金の支払

100,000

 

   0

 

 

 

 

 

 

 

 

⑥経費帳

すべての経費の取引を勘定科目ごとに、日付順で記載したものです。その勘定科目の動きと残高などを確認します。例えば次のような様式です。


               消 耗 品 費

月日

相手勘定科目

摘要

金額

残高

1

10

現金

パソコン

90,000

90,000

3

20

現金

本棚

80,000

170,000

 

 

 

 

 

 

※紹介した帳簿の様式はあくまで一例です。使っている会計ソフトや市販の帳面では違う場合もあります。

 

◆4.10万円控除を受けるための記帳方法と帳簿書類の保存期間

では、10万円控除を受けるための記帳方法などを見ていきましょう。10万円控除は65万円控除と違い、簡易帳簿を記帳し保存すればよいことになっています。

簡易帳簿とは、①現金出納帳、②売掛帳、③買掛帳、④経費帳、⑤固定資産台帳の5つです。

65万円控除と違い、仕訳帳総勘定元帳を記帳する必要がありません。そのため仕訳帳にしか記載されない仕訳が記帳できません(例えば普通預金に銀行から融資(借入金)を受けたなど)。

完全な帳簿付けとは言えないため、65万円控除が受けられず、10万円控除になります。

帳簿や書類の保存期間は65万円控除の場合と同じです。

 

◆5.領収書の保管方法

1年間で最も多い数の書類はおそらく領収書でしょう。特に青色申告者の場合は7年間保管する必要があります。では、領収書の保管はどのようにすべきでしょうか。ここでは、領収書の一般的な保管方法を見ていきます。

領収書の一般的な保管方法は次の2つの方法があります。

①紙で保管

基本的な保管方法です。お店などで受け取った領収書やレシートを、そのまま紙で保管します。実は、紙で保管する場合、どのような方法で保管すべきか厳密には決まっていません。代表的なものとしては、月ごとに白紙に貼り付け、綴りのようにして保管する方法や

少量であれば月ごとの封筒を用意し、そこに保管する方法などがあります。

上記で見た通り、青色申告65万円控除の場合、領収書から作成する帳簿は複数あります。

領収書にNOを振り、帳簿の摘要欄などに記載すると、後で確認するときにわかりやすいでしょう

②スキャナ保存

あらかじめ所轄の税務署に「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」

を提出し、承認を受けることが必要です。

領収書をスキャナで読み込んで電子データとして保存することが認められています。

※タイムスタンプを押せる、決められたスキャナの使用などの一定要件があります。申請書はスキャナ保存をしようとする月の3か月前までに提出する必要があります。

税務署に確定申告書を提出する際、領収書は一緒に提出しません。そのため、保管が必要です。スキャナでの保存は一定の要件がありますが、保管期間が7年と長いため、紙での保管は容量がおおきくなり、保管場所の確保が大変です。領収書がかなりの量になる場合はスキャナ保存を検討してもよいかもしれません。


このほかに帳簿自体を電子データで管理する電子帳簿保存という制度もあります。こちらも一定の条件が必要ですが、青色申告の場合、複数の帳簿が必要でページ数も多くなります。こちらもぜひ検討してみてください。

適切な記帳方法と、保存期間、保存方法を守り正しく確定申告するよう心がけましょう。