地方の特産の野菜やお肉・魚などが謝礼として受け取れるということで人気のふるさと納税。
テレビなどのメディアでも頻繁に取り上げられましたので一度は聞いたことのある言葉だと思います。
謝礼品も先に挙げたような特産品であったり、金券、家電製品までバラエティーが豊富なのが人気の理由ですが、別の理由としてふるさと納税をおこなうことで、所得税・住民税の控除が受けられるという点もあります。
ふるさと納税を賢く利用することで、欲しい物品を受け取ったうえで、さらに税金を安くすることができるのです。ですが「納税」という名が付くと、税金にまつわる申告などの手続きが頭に浮かんでどうもやってみる気がしないという人もいるでしょう。
そこで、今回はふるさと納税と確定申告について解説していきたいと思います。
・そもそもふるさと納税とは?
・ふるさと納税で受けられる税金の控除
・確定申告は絶対しないといけないのか?
・ふるさと納税の仕方
・ふるさと納税での確定申告のやり方
をポイントに解説していきます。
確定申告も受けられる特典と比較してもそこまで難しくはありません。やったことのない人も一度仕組みに目を通して挑戦してみてください。
・ふるさと納税は寄附です
・自分の出身地でない好きな自治体にも寄附できます
・納税の期限は1月1日から1年間
「ふるさと納税」とは、地方公共団体、つまり都道府県や市区町村に対して寄附をすることをいいます。
地方の過疎化や地域間の格差を是正しようと、平成8年の第一次安倍内閣のころに地方の納税を増やすために始められた政府の対策がふるさと納税です。
生まれ育った地方を離れた人たちが故郷の財政の維持に一役買って出ることのできる寄附制度として始まったふるさと納税ですが、それでは、なぜ「納税」と呼ばれるのでしょうか。それは、寄附をすることで一定の要件を満たす場合には、一定額の所得税及び住民税を減額することができるからです。
たとえば自分が幼い頃に過ごしていた地域に対して寄附をした場合には、その地域に対して金銭を拠出することで自らの住む都道府県及び市区町村への納税額が減少します。何もしなければ全て同じ地方公共団体に拠出していたものが、寄附をすることにより、結果として自らが拠出した金銭の一部が別の地方公共団体に対するものとなり、納税をそれぞれの地域に分散したように見ることができます。
そのため、地方公共団体への寄附を「ふるさと納税」といいます。
こう説明すると、寄附をする地方公共団体は、「ふるさと」というくらいなので生まれ故郷のみと思われるかもせん。
しかし、そういうことはなくどこに寄附をしても良いとされています。
また、1か所だけでなく複数の団体に対して寄附をすることもできます。
そのため、納税先の選定理由としては生まれ故郷を応援する、謝礼品が魅力的といったものも当然ありますが、その他にも多くの自治体ではふるさと納税の使い方を明示していてどれに使って欲しいかを選ぶことができるようになっています。
そのため震災などの自然災害の被害地域への復興支援や、環境整備や子供のための施設の拡充といった用途に対して賛同したからといった選び方もあります。
どのような理由でどこの地域に対して寄附をしても構わないというのが「ふるさと納税」の特徴です。
ふるさと納税は1月1日から12月31日までがその年度の期限です。
2016年度であれば2016年1月1日から12月31日までに寄附した額がその年の納税額となります。
地方自治体への応援が目的であれば、自分のタイミングで納税すればいいので問題もありませんが、謝礼品が欲しい場合は話が違ってきます。基本は寄付金額で貰える謝礼品が決まっていますが、食品などの人気の謝礼品の場合は自治体が設定して募集を開始した途端に申し込みが殺到します。
特に生鮮品のようなものは数量が限られていますので競争となってきます。
・2千円を除いた分から所得税、住民税の控除が受けられます
・ふるさと納税の控除は所得税控除と住民税の基本控除・特例控除の3階建て
・控除額には上限が決まっています
・上限額は所得や扶養家族、社会保険料などで変わってきます
「ふるさと納税」をした場合には、一般的にはその寄附をした金額のうち2,000円を除く全額を所得税及び住民税から控除することができるため、自己負担額は2,000円のみとなります。
そのため、結果として寄附をした方の感覚としては、2,000円の負担のみで特産品などの謝礼がもらえるということになるのです。
ただし、「一般的には」という通り、所得税においても住民税においてもそれぞれ寄附金控除の限度額が設けられていますので、その限度額内における寄附である場合に限られます。
以下では所得税における寄附金控除の計算方法と住民税における寄附金控除の計算方法をそれぞれ確認していきます。
所得税は、給与所得や不動産所得などの各所得の合計金額から社会保険料控除や生命保険料控除などの所得控除を差し引いた残額である課税所得金額に対して所得税率を乗じることにより所得税額を算出し、最後に住宅ローン控除などの税額控除を差し引くことにより、納付すべき所得税額が算出されます。
寄附金控除については、所得控除と税額控除のいずれの規定もありますが、「ふるさと納税」に関しては所得控除に該当することとなり、その控除額は
「(その年中に支出した特定寄附金の額の合計額)−(2,000円)=(寄附金控除額)」
と規定されています。ただし、特定寄附金の額の合計額は所得金額の40%相当額が限度額とされています。
つまり、所得金額の40%相当額以内の寄附であれば、「寄附をした金額−2,000円」の全額を所得控除の額とすることができるため、その所得控除額×所得税率(5%〜45%の累進税率)相当額の控除が受けられることとなります。
このように自己負担額2,000円となるのは所得税における控除と住民税による控除の合計であるため、所得税において控除が受けられていない部分については、下記のように住民税において控除を受けることとなります。
住民税の基本的な計算方法は所得税とほとんど同じです。
ただし、寄附金控除の計算は大きく異なります。
住民税における寄附金控除について所得控除はなく、税額控除のみとなります。
また、「ふるさと納税」の場合における税額控除の計算方法については、基本控除分と特例控除分があります。
それぞれの計算方法、限度額については次のようになっています。
〔基本控除分〕
(寄附金の額の合計額 − 2,000円)×10%
ただし、寄附金の額の合計額については、所得金額の30%が限度となります。
〔特例控除分〕
(寄附金の額の合計額 − 2,000円)×(100%−10%−所得税率)
ただし、所得割額の20%が限度となります。
「ふるさと納税」による寄附金控除はこのように計算されることとなるため、これらの限度額以内の寄附であれば、所得税の控除と住民税の控除をそれぞれ控除した結果、自己負担額は2,000円となります。
だいぶややこしい感じもしますが、ネット上にはこれらの計算をしてくれるジェネレーターも多くあります。
正確な限度額は年の終わりにならないとわからないとは思いますが、概算の金額、想定の金額でも限度額の計算ができます。
実際の所得などを上回った計算をしない限りは実質負担2,000円の最大の控除が受けられます。
なお、控除額を上回った分の寄附は実質負担額が増えることになります。
・控除を受けるのであれば申告は必須
・サラリーマン等であればワンストップ特例制度で申告なしでできることも
ふるさと納税というとその後の確定申告がセットでイメージされることが多いと思います。
ですがふるさと納税をしたというだけで確定申告自体は必須ということはないです。
ふるさと納税をしたことで受けられる、前述したような控除を受けるのに確定申告が必要となるのです。
確定申告をしない場合は全額寄付となり、謝礼の品を受け取って終わりです。
税金の控除の制度が用意してありますので、ここはちゃんと確定申告しておきたいところです。
平成27年度よりふるさと納税の制度が改正されワンストップ特例制度が導入されました。
ワンストップ特例制度を利用すると、5か所までの自治体への寄附であれば確定申告をすることなしにふるさと納税による控除を受けることができます。
このワンストップ特例制度の利用には条件があります。
・所得税・住民税の確定申告をする必要のない人である。
・寄附した年の翌年1月10日までに各自治体へ特例申請書を提出する
・寄附した年の翌年1月1日の住所が特例申請書に記載した住所と同一である
こうした条件を満たす人がワンストップ特例制度を使用することができます。
所得税・住民税の確定申告をする必要のない人とありますので対象はサラリーマンなどの給与所得以外の収入のない人、普段確定申告をする必要のない人となっています。
個人事業主やフリーランスの人は確定申告時に一緒に寄付金控除として申告する必要があります。
・各自治体に直接申し込むほか、ふるさと納税専門サイトや一般ショッピングサイトでも可能
・クレジットカードやショッピングサイトの利用でポイントを取得することも
それではふるさと納税を実際に行うにはどうしたらいいでしょうか。
具体的な方法は各自治体によって異なることもありますので、それぞれの自治体のやり方に従うことになります。
そのため、各自治体のホームページなどから申し込むのが基本のふるさと納税のやり方といえるでしょう。
しかし、謝礼品で寄附先の自治体を選びたい場合などは1つ1つの自治体を直接見て回るのは不便です。
そこで近年、ふるさと納税を専門的に取り扱う民間のサイトも増えてきました。
そこでは寄附金額と謝礼品等でカテゴリ分けされており、カタログのような形で寄附先を選ぶことができます。
また、自治体によってはそのサイト上で寄附を完了するところまで手続きが可能なところもあります。
先に紹介した、限度額のジェネレーターやワンストップ制度の特例申請書の手続きも行えるところもありますので、こうしたサイトを経由するのもとっつきやすいかもしれません。
また、ふるさと納税が広く普及してきたことからか、クレジットカードでの寄付金の支払や大手のモール型のショッピングサイトでのふるさと納税もできるようになってきています。
これらを利用する利点は、これら経由でふるさと納税をすることで、クレジット会社やショッピングサイト独自のポイントも獲得できるという点です。
謝礼を受け取り、税金の控除も受けたうえに日頃貯めているポイントも受け取れるという2重3重のメリットがあります。
・当該年の所得税、翌年度の住民税が控除・還付されます
・所得税であれば還付として指定した口座に振り込まれます
・住民税は確定申告後に控除された金額の通知書が送付されます
最後はいよいよ、ふるさと納税をした場合の確定申告です。
確定申告が必要な人は先に説明したように、サラリーマン以外の自営業・個人事業主の方とワンストップ制度の制限を超えたサラリーマンです。
確定申告する際に必要なものは、
・寄附先の自治体が発行する「受領証明書」
・還付金を受け取るための口座
・印鑑
サラリーマンの場合であれば
・勤務先が作成した源泉徴収票
も必要です。
確定申告は確定申告書という決められた書類に記入・入力して所轄の税務署に提出することですが、確定申告書にはAとBの2種類あります。
一般的にサラリーマン(または年金生活者)はAを、自営業・個人事業主であればBを使用します。
確定申告書には様々な所得等の記入欄がありますので必要な部分を記入して下さい。
ふるさと納税の寄付金額の申告を行う欄は「所得控除の内容」の「寄付金控除」の欄になります。
用意したふるさと納税の「受領証明書」の内容を記入して下さい。
寄付金の種類や金額、寄付先の名称・所在地などを記入することになります。
必要事項を記入して税務署に提出すれば確定申告は完了です。
ふるさと納税を確定申告することでどれ位の金額が控除されるかは先に説明しましたが、実際に控除はどういった風にされるのでしょうか。
まず、控除されるのは当該年の所得税と翌年度の住民税です。
例えば、2016年にふるさと納税をしたのならば、2017年2月から始まる確定申告をしなければいけません。
そこで決まるのが2016年の所得に対する所得税と2017年の住民税の額ということです。
住民税であれば確定申告後に住民税の決定通知書が届くと思いますがそこに寄付金控除額が実際いくらになったのかと控除された住民税の額が記載されています。
所得税は控除額が直接還付されます。そのため確定申告の際に口座が必要になるのです。
指定した口座に控除となった金額が振り込まれます。住民税の決定通知書が届くのがだいたい6月の中旬ですが、所得税の還付が行われるのは4月の上旬から中旬にかけてと住民税の通知より早いのが一般的です。