税務書類を税務署等に提出する場合には、書面で提出する方法と、電子データにて提出する方法があります。
そして書面にて提出をする場合には税務署に直接持参をするか、郵送で提出をすることになります。
郵送で提出をする場合には、郵送方法に注意が必要で、
たとえば、確定申告書であれば、特定記録にて郵送をしているのであれば提出日の収受印を受けるなど、直前の提出の際にはその日付に気を付けないと申告期限を過ぎていたりすることがあります。
一方、e-Taxによる電子申告である場合には、このような心配は不要になります。
e-Taxの電子申告を利用すると申告期限当日の24時までに自らのパソコンから電子データを送信すれば良いのです。
電子申告にはこのような便利な点もありますが、申告時にすぐにできるものではありません。
申告期間になってから「今年は電子申告しよう!」と思って開始の手続きを調べてみたら思いのほか用意するものがあって断念という人も多いでしょう。
このようにe-Taxを開始するには事前に用意しておくべきものや事前の申請などが必要です。
この準備を整えてしまえば、以後は家に居ながら申告書類をネットで提出することができるので楽になります。
今回は、電子申請のメリットや事前の準備について説明していきたいと思います。
・e-Taxの電子申告をする為に用意するもの
・e-Taxの電子申告をする為に申請するもの
・e-Taxでの電子申告の仕方
・税理士さんに提出までやってもらう場合は準備は一切不要
・電子申告した際は源泉徴収票や医療費の領収書など添付書類が一部省略可能
・将来的にはスマホでの個人認証でできるようになるかも
以上をポイントに説明していきます。
まず最初に電子申告に必要な4点を紹介します
1 | インターネットに接続できて、PDFが閲覧できるパソコン |
2 | マイナンバーカードなどの電子証明書 |
3 | 電子証明書を読み取れるカードリーダー |
4 | 税務署への「電子申告・納税等開始届出書」の提出 |
パソコンは別として届出書の提出以外にも電子申告のためだけに用意しないといけないというような人も多いでしょう。
この4つを中心に詳しく見ていきましょう
e-Taxを利用するためには、いくつかの事前準備をしておく必要があります。
e-Taxを利用するということは、ネットワークを介して電子データを提出することになるので、当然ながらインターネットに接続できる環境が必要になります。
そして、下記のような条件を満たしていることが推奨されます。
推奨条件を満たしていないからといって必ずしも利用できないということではないですが、動作確認がされていないためエラーが出てしまう可能性があるので、推奨条件はできる限り満たすようにしましょう。
CPU:Pentium4(1.6GHz)以上
メモリ:512MB 以上
HDD:2GB以上の空き容量
画面解像度:1024 × 768以上
OS:Microsoft Windows Vista、Microsoft Windows 7、Microsoft Windows 8.1、Microsoft Windows 10
ブラウザ:Microsoft Internet Explorer 9(Microsoft Windows Vistaの場合)、Microsoft Internet Explorer 11
PDFの閲覧:Adobe Reader XI
e-Taxにより電子申告をする場合には、電子証明書というものが必要になります。
税務書類を紙媒体にて提出する場合には、一般的な本人確認と同様に、他者によるものでない証として原則署名と押印が必要になります。
e-Taxによる電子申告の場合には、電子データに対して署名や押印をすることができないため、署名押印の代わりとなる本人確認の方法として税務書類の電子データに対して電子証明書による電子署名というものを付すことになります。
電子証明書には複数のものがありますが、e-Taxで利用できる電子証明書はおよそ10種類程度に限られています。
その中でも取得しやすく、最も利用が想定されるのがマイナンバーカードになります。
マイナンバー制度が導入される以前は住民基本台帳カードに電子証明書が組み込まれており、これをe-Taxにおける電子証明書として使用することとされていましたが、マイナンバー制度の導入に伴い、住民基本台帳カードに代えてマイナンバーカードを使用することと変更されました。
これまで住民基本台帳カードでe-Taxの電子申請をしていた人は電子証明書の有効期間内であれば引き続き使用することができますが、電子証明書の更新は終了しましたので期限が切れた場合はマイナンバーカードの申請を行う必要があります。
マイナンバーの交付自体は受けたけどマインバーカードは作っていない人も多いと思います。
マイナンバーカード申込みは、顔写真などを添えて郵送やスマホ・PCのネットから、また各地に設定してある証明写真の一部の写真機からできます。
申し込み後は数週間後に市区町村からカードの交付場所などを指定した交付通知書が届きますので、本人確認書類等を持って取りに行くことになります。
マイナンバーカード自体の有効期限は成人であれば10年間、電子証明書としての有効期限は5年間となっています。
電子証明書(マイナンバーカード)の取得と併せて準備をしなければならないものがもう一つあります。
電子証明書を用いて電子署名を付すためには、その電子証明書を読み込むためのICカードリーダライタが必要となります。
別途個人で用意する必要がありますので家電量販店などで購入して下さい。価格は3,000円程度が相場になっています。
使用するパソコンのOS等に対応しているかなど確認して購入するようにしてください。
なお、マイナンバーカード以外に使用できる電子証明書には下記のようなものがあります。
・法務省が運営する商業登記認証局が発行する電子証明書
・TDB電子認証サービス Type Aに係る認証局が作成する電子証明書
・地方公共団体(LGPKI)の認証局が作成する電子証明 など
e-Taxを利用するためには、電子申告をすることについて納税地の所轄税務署長に対して「電子申告・納税等開始届出書」を提出する必要があります。
この開始届出書の提出はインターネット上においてオンラインで提出することができますが、書面にて提出することもできます。
そして、開始届出書を提出すると利用者識別番号が発行されます。
この利用者識別番号を電子申告する税務書類に記載しなければなりません。
開始届出書をオンラインで提出した場合には、利用者識別番号は即時発行されます。
書面にて提出した場合には、「利用者識別番号等の通知書」が1週間ほどで送付されてきます。
なお、所得税の確定申告は国税の申告ですので上記e-taxにおける利用者識別番号で手続きをすることができますが、償却資産申告書の提出など地方税に関する税務書類の提出をする場合には、このままでは提出をすることができません。
これまでに説明をしてきたe-Taxは国税の電子申告であり、地方税の場合には「eLTAX」というものになります。
電子証明書やICカードリーダライタなどは共通しており、異なるのは利用者識別番号です。
eLTAXの場合には専用の利用者IDを別途取得する必要があるので注意が必要です。
e-Taxによる電子申告を行う場合には、上記のような事前準備が必要です。
ただし、税務書類の作成を税理士に依頼している場合には必ずしも上記事前準備が全て必要とは限りません。
たとえば、税理士が税務書類の作成をし、提出も税理士が行う場合には、パソコンの利用環境は税理士が満たしていれば良いでしょう。
また、電子申告・納税等開始届出書の提出をし、利用者識別番号等を取得することについても、それ自体が必要であることには変わりはないのですが、全て税理士が代理で行うことができるため、実際には自らが行う必要はありません。
さらに、電子署名についても税理士が代理送信をする場合には、税理士の電子署名のみでよいこととされていますので、電子証明書の取得もICカードリーダライタの準備も不要となるのです。
上記の事前準備が全て整いましたら、いよいよe-Taxに取り掛かります。
インターネットで「e-Tax」と検索をすると最初に出てくる国税庁のe-Taxホームページにて申告書の作成から電子申告まで全て行うことができます。
e-Taxホームページを開くと真ん中より少し下あたりに「確定申告書等作成コーナー」というリンクがあります。
順番に先に進み続けるとこれまで説明をしてきた事前準備ができているかどうかの確認ページになりますが、すべて満たしているはずですので申告書の作成を進めていくことになります。
なお、この「確定申告書作成コーナー」で作成した申告書はデータで送信する他に、そこからプリントアウトして郵送用の書類とすることもできます。郵送はしなければいけませんが、申告書類を税務署まで取りに行く必要が省けますのでそういう利用方法もあります。
申告書の作成については、自らが申告するものを画面の指示に従って入力をしていくだけとなります。
青色申告決算書や収支内訳書は所得税申告書の金額が連動する部分がなく単独で計算ができますが、所得税申告書は青色申告決算書や収支内訳書が確定していなければ計算ができないので、事業所得や不動産所得がある場合には所得税申告書の作成を始める前に青色申告決算書又は収支内訳書を作成しておく方が良いでしょう。
このようにして申告書が作成できましたら、最後に電子証明書とICカードリーダライタにより電子署名を付した申告書データを送信したら電子申告は完了になります。
なお、このようにインターネット上の国税庁e-Taxホームページにて電子申告をする以外にも電子申告をする方法があります。
JDL、魔法陣シリーズ、達人シリーズ、Acelinkなどの税務申告ソフトには電子申告をする機能が備わっていますので、これらのソフトにより税務申告書を作成し、提出することも可能となります。
所得税の確定申告書を提出する際、申告書の他に添付しなければならないとされている書類が多数あります。
下記はその一例になります。
・給与所得の源泉徴収票
・公的年金等の源泉徴収票
・特定口座年間取引報告書
・社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
・生命保険料や地震保険料の証明書
・医療費の領収書
・寄附金の受領証
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
紙媒体にて申告書を作成する場合には、添付書類台紙などにこれらの書類の原本を貼り付け、申告書と併せて提出しなければなりません。
しかし、電子申告の場合には申告書を電子データにて提出をしているため、併せて提出をすることができません。
そのため、電子申告時にこれらの書類内容を提出する方法として、第三者作成書類の作成により一定の書類については添付を省略することができるとされています。
第三者作成書類とは、本来原本を提出しなければならない源泉徴収票等の記載内容をe-Taxにおいて自ら入力した電子データのことを言います。
この電子データである第三者作成書類を申告書データと併せて送信することで、添付書類の提出を省略することができます。
ただし、入力内容の確認のために税務署等から提示を求められる場合があるため、法定申告期限から5年間は必ず原本の保管が必要ですので注意が必要です。
提示を求められた場合にこれらの書類の保存がされておらず、提示ができなかった場合には、確定申告において添付がされていなかったものとみなされてしまいます。
しかし、申告書に添付が必要となる書類のすべてが第三者作成書類により添付を省略できるとは限りません。
第三者作成書類による添付省略ができない書類については、別途税務署に提出をしなければなりません。
その場合には、別途提出をした書類と電子提出をした申告書を結びつけるため、電子申告後にメッセージボックスに格納される「申告書等送信票(兼送付書)」を印刷し、添付書類と共に提出をすることになります。
なお、別途提出をする添付書類については、法定申告期限までに提出をしなくとも、申告書の提出が法定申告期限までにされていれば申告は問題なく受理されます。
こうした添付書類については2017年1月からはイメージデータでの提出も可能となるようです。
2016年4月より法人税などの一部で開始されましたが、所得税も対象となることで、源泉徴収票や医療費控除の為の領収書などをイメージデータで提出可能になります。
対象となるイメージデータの形式はPDF形式です。
以上がe-Taxでの電子申告のやり方です。
添付書類をPDFファイルで送信できたりと、だんだん便利にはなってきていますが、電子証明書のためにマイナンバーカードとカードリーダーが必要だったりと、まだ事前に必要となるものが多い印象です。
一旦揃えてしまうと後は簡単なんですけどね。
この電子証明書についてもカードリーダーでのものに代わって、スマートフォンなどを利用したものなどが考えられています。
以前は2017年には新しい個人認証方式が導入されるかとも言われていましたが、セキュリティの問題などで再度検討されることとなりました。 早く実現して欲しいところです。
以上、e-Tax利用にあたっての準備と使い方をまとめていきました。個別に見ると準備もそんなに手間ではない印象です。マイナンバーカードを新しく発行するのが一番手間と時間がかかるのではないでしょうか。
申告時期に急に思い立つとなかなか手がつかないことも多いですので、少し余裕をもって準備しておくことをお勧めします。
一旦始めてしまえば後はとても便利に各店申告書の提出ができますのでe-Taxはオススメですよ。