フリーランスや個人事業主が請け負った仕事についての報酬を受けようと思ったら請求書を相手先に送らないといけません。
請求書は当方・先方どちらにとっても重要な書類です。
税務上では個人事業主は5年間の保存義務のある書類となっていますし、万が一税務調査が入ることになれば大切な証拠の書類にもなります。
請求書の作り方、必要な項目を理解していますか?
これからフリーランスになりたい、請求書の書き方を知らない人も、フリーランスとして経験は積んできたけど請求書はこれまで相手先に指定されたものでなんとなく作ってきた、という人も、これを機会に請求書について理解していきましょう。
・請求書の書式
・請求書に必要な項目
・消費税や源泉徴収について
・郵送やメールなど請求書を送る方法
・請求書作成の為のテンプレートやサービスについて
について説明していきます。
請求書そのものについてはガッチリと決まった書式はありません。
請求書発行のタイミングについても1つの仕事が完了する都度に発行し送付する方式(都度方式)や、月ごとなどの決まった期間に完了・納品した仕事についてまとめて発行する方式(売掛方式)があります。
どういった方式でどういう内容の請求書を送ったらいいかは事前に取引相手と相談・確認しておきましょう。
相手の会社にとっても請求書は重要な書類になりますので、相手の指定の請求書がある場合もありますし、この項目があれば形式は問いませんと言われる場合もあります。
請求をする時になってからよりも契約を交わす段階でしっかり確認して両者で同意しておくとドタバタと慌てたりすることもありません。
さて、請求書の書式は基本的に自由で、取引先との相談で必要な項目を書けばいいということは分かりました。
それでは最低限必要な項目はなんでしょうか。
国税庁のウェブサイトでは「請求書等の記載事項や発行のしかた」という項目で以下の5項目を請求書に記載するようにとしています。
1 書類作成者の氏名又は名称
2 取引年月日
3 取引内容
4 取引金額(税込み)
5 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
この5項目を備えていれば最低限請求書と呼べる書類にはなりそうです。
以下では一般的な請求書の記載項目を紹介します。
各項目ごとにどんな書き方をするのかは取引先によって異なる場合があります。
何回も繰り返すようですが重要なのは「事前の取引先との確認」です。
相手先に必要な項目や、こちらでの管理上必要な項目、ビジネスマナー的な慣例として載せているものなどもありますので項目の要・不要しっかり判断しておきましょう。
自分の名前や会社名です。名前以外には住所や電話番号、メールアドレスなどの連絡先もあわせて記載することもあります。
捺印は必須ではないですが個人の丸印や会社名・屋号の角印を押したりします。
捺印の有無自体が請求の効力を左右するということは無いようです。
相手の会社名、屋号などを書きます。
会社名だけでいいのか、部署名まで書くのか。または担当者の個人名まで必要なのかは確認しましょう。
また、会社名や部署名で終わる際にはその後に「御中」の敬称を添えます。
個人名の場合は「様」を使います。
「御中」と「様」を間違ったり、同時に使ってしまうのはマナー違反になってしまいますので要注意です。
物品の売買などでその時に完了する場合は取引の年月日を記載しますが、月ごとに請求書を発行する時などには取引先と発行日をいつにするかをしっかり確認しておくことは大変重要になります。
一般的に請求書の発行日は相手先の「締め日」とすることが多いです。
「締め日」は会計上の売上や請求の処理を行う月間単位の最終日にあたります。
多くの会社は月ごとの決まった日があり、その日までの取引は当月分で、その次の日からは翌月分の処理になります。
会計上の処理単位の月ですので、カレンダーと一致する場合もあれば、月の途中(15日とか20日)に設定されている場合もあります。
発行日を確認しておくとトラブルの回避につながりますので要チェックです。
こちらの管理上にあった方がいいものであって必須ではありません。
後日、取引先から問い合わせがあった場合にこの請求書番号があったほうが請求書の特定の間違いが減る。など管理上便利になります。
請求書番号は通し番号を振るのが基本的な番号の付け方です。
会計ソフトやシステムから請求書を発行している場合はそちらの仕様にもよりますが、複数の取引先に個別の番号が振れるように通し番号の頭に取引先ごとに設定した番号をつけることもあります。
×××-○○○○○
上のような感じです。分かりやすいようにハイフンでつなげることが多いです。
こちらの都合でつけるものですので、取引の規模に応じた分かりやすいものをつけましょう。
請求するのは何をいくらで取引したものかを取引相手に分かりやすいように記載するようにします。
何が必要な情報なのかは取引相手との確認が必要です。
主な項目としては
・品名
商品や労務・サービスの名前です。
提供した労務・サービスの種類によっては源泉徴収が必要となることもあります。
源泉徴収が必要なものについては後ほど説明します。
・数量
・単価
・日付
売掛方式の請求書の場合は実際に商品の取引をした日、サービスを提供した日を記入することもあります。
・金額
・小計
・消費税
フリーランスなどの場合は提供したサービスが消費税も含んだ内税なのか、別途消費税を加える外税なのかの確認をしてそれに合わせましょう。
また外税の場合、消費税の計算方法が切り捨てなのか四捨五入なのか切り上げなのかも確認しておきましょう。一般的には切り捨てが多いようです。
・源泉徴収
報酬に源泉徴収が必要な場合は源泉徴収の税額も記入します。
原則は消費税も含んだ全部の金額から源泉徴収することになっていますが、金額と消費税が分かれて記載されている場合は、報酬の金額から源泉徴収すればいいことになっています。
・合計金額
消費税や源泉徴収などの税金の増減も含めた実際に振り込んでもらう金額です。
間違いが無いかしっかりチェックしましょう。
振り込みしてもらう銀行などの名前と口座番号に名義人を記載します。
振込手数料は一般的に支払側が負担するものとなっていますが、こちらも事前に確認しておきましょう。
「振込手数料はご負担願います」といった文言を一言入れておくと間違いがないでしょう。
これも事前に取引先に確認した上で記載しましょう。
支払って欲しい日を伝えておいてもいいですが、一般的には支払側が締め日とセットで支払日も決めていますのでその日に合わせるといいでしょう。
源泉徴収というとサラリーマンなど会社員の給料から引かれるものというのがイメージです。
ですが、フリーランスも必ずしも源泉徴収と無関係ではありません。
そもそも源泉徴収は給料や報酬を支払う側が支払われる側の所得税を事前に差し引いて支払うこと。
源泉徴収した分の所得税は支払う側が代わりに国に納める制度です。
フリーランスなど個人が受け取る報酬でも源泉徴収の対象となるものがあります。
国税庁のウェブサイトに「源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲」として記載されているのは
・原稿料や講演料など
・弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
・プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
・芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
・ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
・プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
・広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
とあります。
フリーランスに最も関係があるものは最初に記載されている「原稿料や講演料など」ではないでしょうか。
この「など」にはデザイン料も含まれています。
服飾のデザインはもちろん、インテリアデザインやパッケージデザインなども含まれていて、webデザインもこのデザイン料の範囲に含まれるとされています。
詳しくは国税庁のウェブサイトを調べていただければよいですが、この範囲に含まれていないものは源泉徴収の対象ではありません。
現状ではwebデザインは対象となっていますがwebサイト製作は対象外とされています。
デザインは対象ですがコーディングなら対象外のようですね。
また、サイト構築、運営に関わるディレクションも源泉徴収の対象外のようです。
これらは法の解釈のことなのでいまいち私たちには分からないことも多いですね。
受け取る報酬が源泉徴収されている場合は、年末に相手先から源泉徴収票が送られて来るはずです。
源泉徴収票は翌年に行う書と所得税の確定申告に必要となりますので失くさないように、確定申告後も一定期間は保管しておくようにしましょう。
さて、ここまででしっかりとした請求書を作ることができたなら、後はもう相手に渡すだけです。
請求書を相手に送る方法は
・郵送
・メール
・FAX
といった方法が主でしょう。中でも郵送がまだ手段としては多いのではないでしょうか。
こちらもどう送ればいいか相手先と確認するのを忘れないようにしましょう。
請求書の原本が必要というのであれば、郵送することになります。
メールやFAXの方が届くのは圧倒的に早いので、これらの方法で下書きを送って内容の確認やどういう書き方にして欲しいなどのやり取りをしてから出来上がったものを郵送とするといった場合もあります。
請求書は信書にあたりますので送る際は必ず郵便を利用しましょう。
安かったりサービスがいいからと民間宅配業者を利用すると郵便法違反という法律違反になってしまいます。
郵便で送る際は
・長形3号の封筒に請求書を折り畳んで入れる
封筒は長形3号がメジャーのようです。
折らないと入りませんので、請求書は下から3つ折りにするのがマナーのようです。
・住所や宛名を間違えずに書く
請求書に記載した宛名と違う場合があります(書面には担当者まで書くが、封筒には部署までなど)。こちらも敬称の間違いには注意です。
・送付状も一緒に入れる
一般的な礼儀として請求書だけでなく書類の送付には送付状をつけます。
送付状には送付日、送付者、宛名、挨拶、書類の種類、枚数などを記載します。
「請求書のご送付」などのタイトルで簡単な挨拶と書類の概要を説明するものを同封しましょう。
・封筒には「請求書在中」を書いておく
間違って破棄されないように「請求書在中」の文言を書いておきましょう。
縦型封筒であれば左下、横型であれば右下が一般的に記入する位置のようです。
「請求書在中」のスタンプも市販されていますのでこちらを使うのもいいと思います。
・切手も当然忘れずに!
メールに請求書のファイルを添付して送るのも最近は多くなってきています。
郵送よりも手間なく送れますので送る側としては楽です。
メールを利用する際は請求書のファイル形式はPDFが一般的です。
請求書の作成自体はExcelやWordを使用するかと思いますが、そのままのファイルでは改竄が簡単にできてしまいますのでPDFに変換して送りましょう。
捺印はこの場合必要ないか、電子印鑑がいるのかも確認しておきましょう。
環境によっては上手く表示できないということもありますので事前にどういう環境で作るのか、どういう環境で受け取るのかも確認しておくといいでしょう。
FAXはもう利用される機会は減ってきているのかもしれません。
それでも使えるかどうかは相手先と確認して下さい。
FAXの場合もまず最初に郵送のときのような送付状を送ってから請求書を送るのが一般的です。
以上のように送る時点になってしまえばビジネスマナー的な注意点がほとんどですね。
実務的なトラブルというより取引先との信頼関係に関わってくるような項目ですので、気をつけておくに越したことはないでしょう。
メールやFAXで送付した際には、「先ほど請求書をお送りしました」と担当者に電話連絡すると親切ですと勧めるようなビジネスマナーもありますので参考にしてみて下さい。
請求書の作成にはWordやExcelを使用しているという人が多いと思います。
相手先に指定の請求書のフォーマットがあるのであればそちらを使ってしまうのが楽だったりもしますが、こちらで用意しないといけないとなった場合、現在はネット上に沢山のテンプレートがあります。
ダウンロードして利用するテンプレートファイル以外にも請求書作成の為のwebサービスなどもあります。
無料から有料、会員登録の要・不要など利用条件は様々ですが、必要な項目も選べて税額や合計金額の計算も自動でできたり、送付状まで含めたプリントアウトや変換・送信など機能も多種多様です。
会計ソフトなどを使用している人は付属の機能、オプションとして請求書発行ができたりするものもありますので自分の使い勝手のいいものを探してみて下さい。
もちろん、取引先に送るものですので事前の確認は忘れないように。とにかくこの点が1番重要ですよ