個人事業主にかかわる税金は様々。代表的なものは「所得税」と「住民税」ですね。もちろん、これらはサラリーマンであっても納税しなくてはいけません。
個人事業主やフリーランス特有の税金でいえば「個人事業税」というものがあります。
個人事業税は地方税の一種で、一部の職種や所得額によって課税対象になる可能性があります。
「一部の職種や所得額によって」という言葉のように事業者全員に課税されるものではありません。
長くフリーランスで仕事していても個人事業税を払ったことなんかないという人がいるのもこの課税対象となる条件を満たしていないからでしょう。
次からは、フリーランスが払うべき「個人事業税」についてわかりやすく解説していきます。ポイントとしては、以下になります。
・個人事業税は都道府県に納める地方税になります。
・所得額や職種で課税対象になるかが決まります。
・納付時期は年2回、申告の必要はありません。
・個人事業税の計算の方法。
・個人事業税の控除額は290万円。それまでは非課税です。
・個人事業税は職種によって税率が変わります。
・職種によって課税対象になりません。
・開業届や各種資料の注意点。
賢く減税できる方法も記載していますので、ぜひ参考にしてください!
税金には国に納める国税と地方自治体に納める地方税があります。
代表的なところでいうと、所得税は国税、住民税は地方税に該当します。
また、地方税は都道府県が課税する「都道府県民税」と市区町村が課税する「市町村民税」の2種類があります。
ちなみに住民税は「都道府県民税」と「市町村民税」どちらもあって、通常私たちは合算されたものを納付しています。
地方自治体に納める地方税は、住民税だけではありません。「個人事業税」もそうです。
個人事業税は、事業を行っている人が事務所や店舗がある都道府県に納める都道府県民税です。そのため、自宅と事務所(お店)の場所が同じ都道府県にない場合は、事務所(お店)のある自治体に納税することになります。
納税方法は住民税と同じく、地方自治体が税金を計算してくれるので個人事業税は申告の必要はないです。
納付時期は8月と11月です。送付されてくる納税通知書に従い、年二回納付します。
また、個人事業税は所得に税率をかけて税額が決まります。その税率は職種(事業内容)によって税率が決まる仕組みで、所得の多い少ないによって全てが決まるのではありません。
課税対象となる事業は、第一種、第二種、第三種の3つに分かれています。
例えば、第一種事業には印刷業や保険業を営んでいる人が該当し税率は5%。
第二種事業には畜産業・水産・薪炭製造を営んでいる人が該当し税率は4%。
第三種事業にはマッサージ業などを営んでいる人が該当する3%の税率と、税理士やデザイン業、美容業などを営んでいる人が該当する5%の税率の2種類に分かれています。
同じフリーランスでも、ライター、システムエンジニア、ユーチューバーなどが税率が決められた職種に該当しないけれど、美容師や理容師・料理人は該当するという区分けになっています。
職種については後半で詳しく説明します。
個人事業税の計算方法は所得税と同じですが、事業税には290万円という「事業主控除額」があります。
そのため、事業所得や不動産所得の合計がが290万円を超えなければ個人事業税ははかかりません。
個人事業税は、以下の式で算出します。
(所得-経費-各種控除)× 税率 = 個人事業税額
以上の計算方法ですが、注意すべき点はまずこの控除の中には青色申告の特別控除65万円は含まれません。
所得税であった「専従者給与等」の控除は基本的に所得税と同様に適用されます。
青色申告の場合は、専従者への給与支払全額を、白色申告の場合は配偶者の場合86万円、その他の方の場合は1人50万円が限度で控除することができます。
その他、「各種控除」に当てはまるのは、一律で適用される「事業主控除」と、状況に応じて適用される3つの「繰越控除」です。
状況に応じて適用される3つの「繰越控除」は、損失の繰越控除(青色申告者で、赤字となった時)・被災事業用資産の損失の繰越控除(白色申告者で、震災などによって損失がある時)・譲渡損失の控除と繰越控除(機械などの事業用資産を譲渡したために損失が生じた時)があります。
個人事業税の税率は、第一種事業5%、第ニ種事業4%、第三種事業5%(あん摩等医業に類する事業及び装蹄師業は3%)があり、この3つの区分には総計70の職種があります。
●第一種事業(37業種)● 5%
物品販売業、不動産貸付業、製造業、広告業、写真業、運送業、駐車場業、請負業、飲食店業など
●第二種事業(3業種)●4%
畜産業、水産業、薪炭製造業 (主として自家労力を用いて行うものを除きます。)
●第三種事業(30業種)●
医業、歯科医業、弁護士業、司法書士業、税理士業、コンサルタント業、理・美容業、デザイン業など5%
あん摩・はり・きゅう・柔道整復等の業、装蹄師業 3%
上記のような職種の分類でほとんどの職業はカバーされていますが、この分類に該当しない職業、例えば記載のない職業に文筆業がありますが、個人事業税の課税対象外となります。
それでは、上記の職業に該当する人を税務署がどう判断するのでしょうか。実は、開業届の時に記入した「職業欄」なのです。
開業届の記入欄には特に難しいものではありませんが、一番注意して書かなければいけない欄が「職業欄」です。
なぜなら、この職業欄に書いた職種によって、個人事業税の税率が変わってくるからです。
最近、特にフリーで活動されている方はこの法定業種には該当しない業種(ライター、SE、プログラマー、アフィリエーターなど)が増えています。
どういった職種が個人事業税の対象となるかは各都道府県の判断になります。
事業所得が290万円を超えた段階でお尋ねがあるそうなので、所得が290万円を超えた場合は心づもりをしておきましょう。
実際にプログラマーなどIT関係のエンジニアは製造業と判断されることもあるようです。
自分の職業がどの職種に当てはまるかどうか分からない人は、開業届を提出する際に「職業欄」に神経を使いましょう。
だからといってデザインやコンサルなどを主に行うけれど課税対象にならないからといって「文筆業」と届け出るのはお勧めしません。
税務署もよくできたもので、なにかしら分かるようになっているようです。
あとで「文筆業」の届け出がごまかしだとわかった場合は大変な目に遭いますので、そこは正直に届け出ましょう。
ライティングもデザインもコンサルティングも並行してやってる場合はどうなるのでしょうか?
そこは最終的には都道府県の判断ですので税務署に一度相談してみることをおススメします。
届け出た職種の名前よりも重要視されるのは活動の実態のようです。
フリーランス、個人事業主の方が開業したときに、都道府県税事務所と市区町村役場の税務課などの地方自治体それぞれにも「個人事業開始申告書」を提出する必要があります。
税務局だけではなく、都道府県と市区町村に事業を開始したことを伝えるためです。
地域によって、この申告書の呼び方や手続き方法などが異なる場合があるので注意が必要になりますので、ご自分が所属する自治体の担当者に問い合わせてみるといいかもしれません。
また、提出期限は各自治体によって異なりますが、おおむね個人事業の開業・廃業等届出書と同様、事業を開始した日から1か月以内となります。ただし、東京都の場合は15日以内と期間が短く注意が必要です。
こちらもあらかじめ、自分が住んでいる地域の管轄の税務署や役場に確認しておくと安心です。
以前ご紹介した個人事業の開業・廃業等届出書が国税の納付を宣言するものだったのに対して、この事業開始等申告書は各種地方税の納付を誓約するものと考えてください。
ただし、申告しなかった場合の罰則は規定されておらず、また先ほどから述べている通り、個人事業税には年間290万円の事業主控除があるため所得が290万円を超えない限り支払の必要がありません。
そのため、この申告書を提出せずに事業開始する方も多いのですが、事業開始等申告書を提出しない場合でも、確定申告を行うと税務署から自治体(都道府県)に通知が行くようになっています。