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領収書をスマホから保存!2017年スタートの改正電子帳簿保存法についてのわかりやすい解説

◆電子帳簿保存法の改正で領収書をスマホで読み取れるように!

電子帳簿保存法という法律をご存知でしょうか?

会社や事業主が作成し受け渡しなどを行っている帳簿や請求書、領収書などは保管しておかねばならない期間がありますよね。
皆さんしっかりとファイルして保管してらっしゃるかと思います。

それらの会計書類を電子データとして保管できるように規定を国が定めたものが電子帳簿保存法です。

 

それなりに昔から存在していた法律で技術の進歩等を踏まえて何回も改正されてきた歴史があるこの法律ですが、
2016年にも改正が行われ、2017年の元旦から新しい制度での運用がスタートしました。

今回の改正の目玉と言われているのは、

スマホ等のカメラを使用して読み取ったデータでの保管が認められるようになった。

という点です。

 

これまでいまいち使い勝手が悪く浸透してこなかった書類のスキャン保存ですが、

スマホやクラウドサーバーの登場に対応した制度にして、これまで利用していなかった小規模事業者にも使ってもらおうということのようです。

今回はこの改正された電子帳簿保存法に基づいた帳簿のスキャン保存についてまとめます。

これまでの法律と何が変わったのか、新しい法律でのポイントや実際にスキャン保存を行うにはどうしたらいいのかを紹介していきます。

 

スキャン保存を導入するのに押さえておきたいポイントは


・スキャン保存を行うためには、開始3か月前までに申請が必要
・読取装置の規定が緩和、スマホ・デジカメのデータでもOKに
・書類の金額についての上限はない
・電子署名はいらないがタイムスタンプが絶対必要
・税理士等の定期的なチェックも必要
・小規模事業者が導入しやすい特例も
・適正事務処理要件に則ったルール作りが不可欠
・データ化したからと言って原本をすぐに捨てていいわけではない
・書類の原本は支店や各事業所で持っていてよい

などです。

 

請求書といった書類は国税上重要度の高い書類です。
改竄を防ぐなどの理由で決まりを緩くするにも限度があります。

そのため、まだ気軽に導入できるといったレベルでもなさそうですが、会社のペーパーレス化や保管スペースの省略などのメリットも多いです。

それでは次から詳しく説明していきます。

 

◆スキャン保存できる書類

そもそもスキャン保存とはいってもどの書類のことを言っているのでしょうか。

ます最初にその点を押さえておきましょう。

◎スキャン保存できる書類

契約書、領収書、請求書、納品書

預り証、借用証書

預金通帳、小切手、約束手形

有価証券受渡計算書、社債申込書

契約申込書 など

 

◎スキャン保存できない書類

仕訳帳、総勘定元帳、帳簿関係書類全般

棚卸表、貸借対照表、損益計算書

決算関係書類全般等

 

こういう決まりがあります。
対象外の書類はいわゆる帳簿や決算書ですね。

帳簿類はPCで会計ソフトを利用して作られたデータとしての保管は認められていますが、

手書きの帳簿等をスキャンしてデータ化したものの保管は認められていないということです。

あくまで紙媒体としてあったものをスキャンして保管できるものは上記の契約書等の書類になります。

 

◆電子帳簿保存法とは?

次に電子帳簿保存法とはどういった法律なのかです。

高度情報化・ペーパーレス化の進展の中で、会計分野でもコンピュータによる帳簿書類の作成が普及し、

帳簿書類の電磁的記録(いわゆる電子データ)及びマイクロフィルムによる保存の容認についての強い要望が起こりました。

 

その中で、適正公正な課税を確保しつつ納税者等の帳簿保存の負担軽減を図る目的から、国税関係帳簿の電磁的記録等による保存制度が創設されました。

そして、この制度を定めたのが、1998年7月に施行された電子帳簿保存法(正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係書類の保存方法等の特例に関する法律」)です。

 

◆法律の制定から今回の改正までの流れ

電子帳簿法が施行された当初は、電磁的記録として保存が認められていたのは、当初から電子計算機で作成した決算データのみであり、

領収書等の紙データをスキャンして電磁的記録として保存することは認められていませんでした。


領収書等の紙文書のスキャン記録の保存が認められたのは、

民間事業者による電磁的記録による保存等を可能にする共通事項を定めた「e-文書通則法」や「e-文書整備法」の施行に伴い、2005年4月に電子帳簿法が改正された後のことです。


2005年4月の電子帳簿法の改正によって、特に重要な文書である決算書類や一定の帳簿、

額面3万円以上の契約書・領収書を除き、原則としてすべての書類を対象に、

スキャナ(原稿台と一体となったものに限る)を利用して作成した電磁的記録による保存(スキャナ保存)

が可能となりました。


その後、2015年には、以下の事項についてさらに改正が行われました。

(1)スキャナ保存の対象となる国税関係書類の範囲の拡充

(2)スキャナ保存の要件の緩和

(3)適時入力方式に係る要件の緩和


まず(1)については、スキャン保存の対象となる領収書・契約書が額面3万円未満という要件が撤廃されました。


(2)については、紙からスキャンした受取書や発行した書面の控えの電磁的記録を保存するためには、

当該電磁的記録に電子署名を付与することが要件とされていましたが、この要件が撤廃されました。


(3)の適時入力方式による要件の緩和の1つ目は、

改正前は、すべての書類について書類の大きさに関する情報の保存が義務付けられていましたが、

改正後は、当該情報の保存が義務付けられるのは、一定の重要書類に限定されました。

上記要件の緩和の2つ目は、

改正前は、すべての書類についてカラーでの保存が義務付けられていましたが、

改正後は、一定の重要書類以外は、白黒での保存が可能になりました。

 

◆2016年の改正の内容

2016年度税制改正による電子帳簿保存法(以下「電子帳簿法」といいます。)の改正では、以下の点について見直しが行われました。

(1)読み取りを行う装置に係る要件の緩和

(2)受領者等が読み取りを行う場合の手続きの整備

(3)相互牽制要件にかかる小規模企業者の特例

 

まず、(1)については、従来は、国税関係書類に記載されている事項を電磁的に記録する装置は、スキャナ(原稿台と一体となったものに限る)と定められていました。

しかし、今回の改正で、スマートフォンやデジタルカメラによって記録された撮影された電磁的記録も、電子帳簿法によるスキャン保存の対象となりました。


(2)については、(1)に基づき、スマートホンやデジタルカメラによって撮影した国税関係書類の電磁的記録には、3日(従来のスキャナーを使用した保存の場合には1週間)以内にタイムスタンプを実施しなければならないと定められました。


そして、従来は、国税関係書類の大きさに関する情報を保存する必要がありましたが、今回の改正で、当該書類がA4サイズ以下の場合には、その必要はなくなりました


さらに、電子帳簿法に基づくスキャン保存を行うための適正事務処理要件については、従来は、スキャンされた国税関係書類の記載事項の確認は原本によって行うものとされていましたが、改正後は、スキャンされた画像データのみによる確認も可能になりました。


最後に、従来は、国税関係書類の原本の保管場所は本店に限定されていましたが、改正後は、本店のほか、支店、事務所、事業所等での原本の保存も可能になりました。

 

(3)については、従来は、スキャン保存を行うためには、帳簿作成の当事者、経理担当者等の確認者、検査担当者の最低でも3名以上の人員が必要でした。


しかし、今回の改正で、常時使用する従業員数が20人(商業又はサービス業の場合は5人)未満の小規模企業者に限り、税理士等の税務代理人が定期検査を行えば、帳簿作成の当事者と税務代理人の2名体制で、スキャン保存が可能となりました。

 

◆「適正事務処理要件」とは?

適正事務処理要件とは、20015年の電子帳簿法改正でスキャン保存できる書類の範囲が拡大されたことで追加された要件です。

改ざん等の不正行為の防止のために、事業者に要求される内部統制のこと。
平たくいえば、スキャン保存をする上で間違いが起こらないために各企業が定めるルールの大原則のようなものです。


以下の3つの事項に基づいたルールのうえで処理されるように要求されています。

(1)相互牽制

相互に関連するスキャン保存に係る各事務について、それぞれ別の者が行う体制


(2)定期的なチェック

スキャン保存事務に係る処理の内容を確認するため定期的に検査を行う体制


(3)再発防止

スキャン保存事務に係るそりに不備がある場合に、その報告と原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制

そしてこの適正事務処理要件は、2016年の改正によって、その一部が緩和されました。

 


まず、緩和前は、経理担当者等の確認者は、領収書等の税務関係書類の原本を確認したうえで、スキャンをする必要がありました。

しかし、2016年の要件緩和で、経理担当者等の確認者は、税務関係書類についてスキャンされた画像で確認ができれば、必ずしも、原本を確認しなくてもよいことになりました。

また、スキャンされた画像データの原本は、上記要件(2)に該当する定期検査があるまでは保存する必要がありますが、緩和前は、その画像データの保存先は本店に限定されていました。

しかし、今回の緩和後は、スキャンデータの原本の保存先は、本店に限られず、支店、事務所、事業所等での保存も可能になりました。

 

◆電子帳簿保存には「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」の提出が必要

国税関係書類を2016年改正後にスキャンデータで保存するためには、

スキャン保存を開始しようとする3か月前の日までに、「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」を、所轄税務署に提出する必要があります。

 

また、申請書には、以下の書面を添付しなくてはなりません。

①承認を受けようとする国税関係帳簿の作成を行う電子計算機処理システムの概要を記載した書類

②承認を受けようとする国税関係帳簿の作成等を行う電子計算機処理に関する事務手続きの概要を明らかにした書面

③申請書の記載事項を補完するために必要となる書類その他参考となるべき書類


なお、従来からスキャン保存を行っている事業者の場合、
2016年改正の方法、スマホでのスキャン保存を行いたいのであれば新たに申請書の提出が必要です。
そうでない場合は以前の方法でしかスキャン保存できません。

 

◆法改正でスキャン保存業務の変わる点

ここまで電子帳簿保存法の改正の流れを見てきました。
実際業務の流れとしてどういう風に変わるのか要点をまとめていきましょう。

 

2016年改正でスマホやデジタルカメラを利用した税務関係書類のスキャンデータが利用可能になりましたが。
これは会社の営業係が仕事先で代金の領収書等を受け取った場合、スマホ等を利用してその場でスキャンを行うことが可能になるということです。

 

従来であれば、

・営業係が仕事先で受領書等を受け取る

・営業係はその書面を会社に持ち帰り経理係に渡す

・経理係は書面原本を確認してスキャナーに読み込ませてデータを作成する

・その後、経費等であれば必要な清算処理を行う

・作成されたデータは定期的な事後検査を他者から受ける

こういった流れになります。

スキャンに使用する機器の要件が厳密でしたので時間だけでなく場所も制限されます。


これが改正後は

・営業係は書類等を受け取った後、その場でスマホ等でスキャン

・経理係はデータを確認して処理

・作成されたデータは定期的な事後検査を他の担当者から受ける

といった流れになります。

書類を社内に渡すのとデータ化するのが一緒の作業になりますし、

機器の制約が外れますので出張中の経費精算もできるようになるということです。

 

さらに小規模企業であれば税理士等の外部チェックがあれば、スキャンを行った人と合わせて2名でいいことになるということになります。

 

◆スキャン保存のメリットとデメリット

電子帳簿保存法と税関係書類のスキャン保存について説明してきましたが、最後にスキャン保存のメリットとデメリットを振り返ってみましょう。

 

スキャン保存の大きなメリットと言えばやはりペーパーレス化による場所の圧迫が解消されることです。

間違っても勘違いしてはいけないことですが、スキャンデータを作成したからといって書類原本をすぐに破棄していいわけではありません。

 

事後のチェックが必要ですのでそのチェックが終わるまでは保管しておかねばなりません。

チェックは最低1年に1回は行うことになりますので、紙媒体のみで5年から長いと10年保管するのに比べれば格段に紙の量は減ります。

省スペースの効果は高いですので大きな事業所を持たない小規模会社には特にメリットが大きいと思います。

 

また、これまで原稿台つきスキャナーしか認められなかったスキャン機器がスマホ等からのデータでもよくなったことで経理担当者の業務の不可もずいぶん軽くなるのではないでしょうか。


次にデメリットですが、導入するのに一番手間なのがタイムスタンプではないでしょうか。

スキャン保存の電子データの作成者は、タイムスタンプを付与する必要があります。

タイムスタンプとは、特定の文書が、ある時刻から存在したことと、その時刻から検証した時刻まで変更・改竄が行われていないことを証明する技術のことをいいます。

 

タイムスタンプの付与は、一般財団法人日本データ通信協会の欽定を受けたタイムスタンプ事業者が発行したタイムスタンプを、スキャンをした人が電子データに埋め込まなければなりません。

 

このタイムスタンプの導入がコスト的にも随分とスキャン保存導入のハードルを上げているようです。

小さな会社が独自でタイムスタンプの仕組みを導入するのはかなり難しいのではないでしょうか。

 

一部の会計ソフト、特にクラウド型の会計サービスや経費管理システムでは認定を受けたタイムスタンプに対応できるものもあるようです。

 

またこのタイムスタンプですが、経理担当者等が書類を集めてスキャンする場合には、データ作成から1週間以内に行えばよいことになっています。

しかし、書類の受領者がスキャン保存を行う場合には、タイムスタンプはデータ作成後3日以内に行わなくてはなりません。

スマホからスキャンをしようとする人は特に忘れないようにしましょう。

 

最後はしっかりとした内部のルール作りが必要だということです。
 

・相互牽制
・定期的なチェック
・再発防止

の3点を満たしたルールに従った処理が求められます。

スキャン保存の開始には「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」の提出が必要ですが、その際に税務署の方からも指導と確認が入るようです。

税務上重要性の高い書類も含みますので税務署の目もそれなりに厳しいようですのでしっかりとした業務フローでの運用ができないといけないということですね。