自分で事業を立ち上げた人なら必ずぶつかる壁といえば、確定申告ではないでしょうか。
初めての確定申告、「何をしたらいいの?」「どんな手続きが必要なの?」と、わからないことが多いですね。
ここでは、確定申告の基礎から開業のための手続き、申告方法までをご説明します。
まずは、確定申告とはそもそも何か?ということから ・確定申告をしないといけない人はどういった人か ・いつまでにしないといけないのか
・申告方法や必要な書類
・申告の期間
・書類の提出方法
・確定した所得税の納付方法
以上をポイントに解説していきたいと思います。
自分で事業をはじめると、「1年間でいくら儲けたのか」「税金はいくらか」などを確定申告しないといけません。
毎年2月から3月にかけて、TVやネットで確定申告の話題が出てきますね。
では、確定申告ってなんでしょう。
簡単に言うと、「1年間の収入、支出、利益はこうだったので、これだけ税金を払います」ということを自分で税務署に申告することです。
日本は納税者に対して、「申告納税制度」という制度をとっています。税金を納める側が税金の額を計算し、国に申告・納付する制度です。この申告のことを「確定申告」といいます。
タイトルを見て「あれっ?」と思われた人もいるかもしれません。実は「かならず確定申告しないといけない人」と「してもいい人」の2種類の人がいます。
それぞれを見ていきましょう。
◎個人事業主の場合
「納める税金」がある個人事業主はかならず申告しなければいけません。納める税金がない人は、確定申告をしなくてもよいことになっています。
例えば、赤字の人や、事業は黒字だが社会保険料(健康保険、厚生年金)などの控除を引くと納める税金が出ない人などは、確定申告しなくてよいことになっています。
ただし、確定申告しないと銀行からの融資ができなかったり、収入証明が発行できないなど不都合もあるため、実際は納める税金がなくても確定申告している人が多いです。
◎サラリーマンの場合
① 年間の給料が2,000万円を超える人
年間の給料が2,000万円を超える人は会社で年末調整をしてもらえないため、確定申告する必要があります。
② 副業をしている人
会社からの給料以外に副業をしている人は基本的に確定申告が必要です。
※1年間の副業の金額が20万円以下の場合は不要です。
「してもいい人」という表現は微妙な言い回しですね。「しなくてもいいし、してもいいよ」ということです。対象となるのは、ズバリ確定申告をすると税金が戻ってくる人です。
税金が戻ってくる場合の例といては、医療費控除がある人や初めて住宅借入金控除を受ける人などです。新たに税金は発生しないけれど、お返しする額はあるので「しなくてもしてもいいよ」となるのです。
ですので「しなくてもいい」ではありますが受け取るお金があるわけですからしたほうが当然おトクということになりますね。
確定申告の期間は毎年2月16日~3月15日となっています。
申告するのはその前年の1月1日から12月31日までの1年間の収入です。
※土日に該当する場合は、日付が異なりますのでご注意ください。
また税金が戻ってくる場合は翌年1月4日から提出することができます。
確定申告をする人は医療費控除などを受けて税金が戻ってくるサラリーマンと、自分で事業をする個人事業主の2つに分かれます。確定申告書の用紙もサラリーマン用と個人事業主用の2つに分かれます。
サラリーマン用は「確定申告書A」
個人事業主用は「確定申告書B」
の用紙を使います。
サラリーマンの方はすでに給料の年末調整をされていますので、源泉徴収票を基に「確定申告書A」を記載し、医療費控除などのそれ以外の部分を追加で記載することになります。医療費控除については、下記の国税庁HPを参考にしてください。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/tebiki2015/pdf/04.pdf
個人事業主の場合は自分で売上や費用を集計し、利益を計算した上で、「確定申告書B」に金額を記載する必要があり、複雑です。
ここで、所得税のしくみを簡単に見てみましょう。
所得税の計算の流れをみてみましょう。
①所得金額を求めます。
所得金額とは、売上などの収益から仕入や経費などの費用を差し引いた金額です
所得金額=収益-費用
②課税される所得金額を求めます。
課税される所得金額とは所得金額から所得控除を差し引いた金額です。
課税される所得金額=所得金額-所得控除
※所得控除とは…「養っている家族の人数や医療費にお金が多くかかった」「生命保険や地震保険の支払いがある」など個々の人ごとに生活に必要なお金を考慮するために設けられている控除のことをいいます。これは所得税の計算の途中で所得金額から差し引かれます。
③所得税の金額を計算します。
課税される所得にその所得金額に応じた税率をかけ所得税額を求めます。
所得税額=課税される所得金額×所得税の税率
所得税の税率は所得によって変わります。
所得が高ければ高いほど税率が高くなります。所得税の税率については、国税庁のHPで確認してください。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
④納付金額の計算
・税額控除
住宅借入金控除や政党などへの寄付金は所得税の金額から直接控除することができます。
・復興特別所得税
東日本大震災からの復興を図るため、平成49年まで所得税額の2.1パーセントが復興特別所得税として加算されます。
納付金額=所得税の金額ー税額控除+復興特別所得税
以上が所得税のしくみです。
また事業をはじめると、「確定申告書B」を作成するまでにもいろいろな書類の作成や提出が必要になります。
次からは、個人事業主が開業したときから確定申告までに必要な書類、手続の流れを見ていきましょう。
◎開業したときに提出する書類
まず個人事業主が開業をしたときに提出する書類です。
これは確定申告時ではなく事業を開始した時に提出します。
・個人事業の開業・廃業等届出書
法人の場合、「定款」という会社の定めを作り、法務局に「何月何日に設立しました」という登記をします。法務局に届け出た日が公的な「会社ができた日」となります。
一方、個人事業主の場合は法務局への登記などは必要なく、公的な開業日はありません。「今日から開業するぞ!」と思った日が開業日です。
ただし、思っているだけだと税務署にはわからないので、「個人事業の開業・廃業等届出書」(以下「開業届」)を提出する必要があります。提出期限は事業開始の日から1か月以内です。開業届は国税庁のHPにPDFが用意されています。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/05.pdf
※マイナンバー(個人番号)の記載が必要です。税務署提出時に本人確認書類の提示を求められる場合があります。マイナンバーカードを持っている場合はそのカードを、通知カードしかもっていない場合は、免許証やパスポートとともに提示してください。
・所得税の青色申告承認申請書
青色申告をする場合は、「開業届」のほかに「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。提出期限は事業開始の日から2か月以内です。「開業届」と一緒に提出するのが一般的です。申請書は国税庁のHPにPDFが用意されています。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/10.pdf
ここで、「青色申告」について、少し触れておきましょう。
前述したとおり、確定申告は納税者が自分で利益や税金の金額を計算し、申告・納税しなければいけません。
個人事業主の場合、正しい利益や税金の金額を計算するためには普段から日々の取引をより正確な帳簿付けをしておく必要があります。
「普段から正確な帳簿付けをしている人には少し優遇しますよ」というのが「青色申告」です。青色申告ができるのは事業所得、不動産所得、山林所得の3つの所得に限られています。
青色申告のように正確な帳簿付けが義務付けられていない(ただし優遇も受けられない)タイプの申告を「白色申告」といいます。
では、青色申告の「優遇特典」はどのようなものでしょうか。主なものを見ていきます。
①青色申告特別控除
こちらは、正確な帳簿付けをすると最高65万円の控除を受けられるというものです。
所得税のしくみで所得税の計算の流れをみましたが、65万円控除は所得金額の計算で
控除されます。
所得金額=(収益-費用)-65万円
※収益-費用が65万円未満の場合はその金額までしか控除できません。
②青色専従者給与(別途、届出書が必要)
所得税では、配偶者や家族に対する給料は経費にすることができません。しかし、青色申告をしている場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、15才以上の家族に対する給料(青色専従者給与といいます。)を経費にすることができます。「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出期限は事業開業の日から2か月以内です。
③損失の繰り越し
青色申告をしている場合は赤字の金額を3年間繰り越すことができます。
赤字を繰り越すことで、翌年以降出た黒字をその分相殺することができます。
以上のような特典がありますので、可能であれば青色申告で確定申告をするのがオススメです。
◎日常の帳簿づけ
現在は青色申告、白色申告のどちらの申告方法を選んだとしても帳簿付けと保管は必須となっています。
開業についての届け出を提出したら、確定申告時期がくるまでは日常の帳簿をつけていくことになります。
領収書や帳簿は確定申告のときに提出義務はありませんが、保存の義務があります。
特に領収書は紛失の恐れもあるので、月ごとにノートに貼ったり、封筒に入れるなど、なくさないように保管しておきましょう。
保管方法について、とくに法律で決まっている方法はありません。
9月後半~11月ぐらいにかけて生命保険や地震保険などの控除証明書(ハガキ)や住宅ローンの借入残高証明書などが送付されます。
これらは確定申告に必要なため、なくさずに保管しておきましょう。
12月までの帳面をつけたら、いよいよ確定申告です。
提出書類・添付書類(提出書類と一緒に出さなければならないもの)・提出期限・提出方法・所得税の納付方法についてまとめてみました。
◎提出書類
青色申告の場合で必要なもの…「確定申告書B」「青色申告決算書」
白色申告の場合で必要なもの…「確定申告書B」「収支内訳書」
「青色申告決算書」や「収支内訳書」は会社の経営状況を記載する書類です。
1年間の取引の金額を売上高や仕入高、経費ごとに分けて記載します。開業届を出していると、それぞれの書類が税務署から送られてきます。
「青色申告決算書(収支内訳書)」と「確定申告書B」は別々で送られてきますので注意してください。
◎添付書類
控除を受ける場合は証明書の添付が必要です。主なものは次のとおりです。
医療費控除…医療費の明細書、医療費の領収書
社会保険控除…社会保険料控除証明書(国民年金保険料)
※国民健康保険については添付する書類はありません。
生命保険料控除…控除証明書
地震保険料控除…控除証明書
寄附金控除…寄附金の受領書
◎提出方法
確定申告書の提出方法は次の3つです。
・所轄税務署の窓口に持参
提出用と控えの2部を作成し、持参します。
控えに受付印を押して返却してもらいます。
銀行などに提示する場合は受付印の押された控えを要求されるため、
必ず控えも持参しましょう。
・郵送で所轄税務署に提出
郵送で提出する場合は、提出用1部、控え1部、切手を貼った返信用封筒を
同封します。後日受付印の押された控え郵送で返信されます。
※注意点…提出日は消印の日になります。提出期限ぎりぎりの場合はできるだけポストに投函することは避け、郵便局に持参しましょう。できれば簡易書留で送付すると安全です。
・e-Taxで送信
e-Taxで送信することで、紙ではなくデータで提出することができます。
ただし、あらかじめ電子申告する旨を税務署に届け出ておく必要があります。
◎納付方法
所得税の納付方法は次の3つです。
・現金で納付
所得税の納付書は確定申告書と同じ封筒で送付されてきます。
納付書に納税金額を記載し、所轄税務署の納税窓口や、銀行、郵便局で支払います。
納付期限は、確定申告書の提出期限である翌年3月15日です。
※コンビニでは納付できないので注意しましょう。
・振替納税
指定した口座から自動で引き落としされる納付方法です。
振替納税の場合は毎年4月中旬(20日ごろ)に自動で引き落としされます。
※確定申告書の提出期限である翌年3月15日までに「預貯金口座振替依頼書」を提出することが必要です。
・e-Taxで納付
インターネットを通じて納付します。
※29年1月以降よりクレジットカードでの納付が可能になる予定です。
国税庁のHPからクレジットカード情報画面に推移するようになる予定です。
以上、確定申告の流れを解説しました。
確定申告は日本国民であれば義務である所得税や市民税の納税額を決める必要なものです。
普段の帳簿付けや、領収書などの管理をさぼってしまうと2月からの申告期間までに年明け早々から大慌てで作業が必要となったりしますので。日々の会計業務はキッチリとやっていくことをお勧めします。