毎年2月16日から3月15日までの間に、個人事業主は前年度の所得税の確定申告をおこなう必要があります。
確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。皆さんは白色申告と青色申告、どちらの申告者数が多いと思いますか。
青色申告のほうが圧倒的に多いと思っていませんか。
実は平成26年度のデータによると、おもな収入が事業所得である申告納税者のうち白色申告は67万人、青色申告は96万2000人でそんなに差はありません。
【参考:国税庁 申告所得税標本調査 P31】
https://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/shinkokuhyohon2014/pdf/h26.pdf
では、白色申告とはどのようなものでしょうか。
最初に一言で言ってしまうと、
「簡易的な帳簿付け、税金の計算方法で済む代わりに控除などの特典がない」
とまとめられます。
つまりは、青色申告は特別な控除等の特典をを受けられるのがメリット、複雑な帳簿をしっかりつけることを要求されるのがデメリット。
一方白色申告はより簡易な帳簿づけで済ませられるのがメリット、青色申告で受けられる特典が受けられないのがデメリットです。
節税的な面から青色申告を勧められることが多いですが、それ以外にも違う点も多いです。
そもそも所得の種類によっては青色申告できないといったこともあります。
また、白色申告であれば帳簿付けとその保存が必要ないと考えている人もおられるかもしれませんが、
2014年からは白色申告者も帳簿付けとその保管が義務付けられていますので気を付けてください。
ここでは白色申告とは何かを、青色申告との違いを中心にみていきましょう
・青色申告をする届け出をしないと自動的に白色申告になります
・青色申告のような特典が白色申告にはありません
・あらゆる所得が白色申告の対象です
・白色申告でも帳簿付けと保管は義務です
・青色申告よりも簡単な帳簿の付け方でOK
・提出するのは「収支内訳書」
以上の点が白色申告のポイントです。
白色・青色でどちらで申告しようか悩んでいる人もいるかと思いますのでどういったものなのか見ていってください。
所得税の確定申告において、原則は白色申告です。青色申告の申請を行っていない場合、自動的に白色申告になります。
日々の取引を単式簿記で帳簿付けし、1年間の売上や仕入などの損益科目の合計金額を「収支内訳書」に記載する―これが白色申告の流れです。
収支内訳書で計算した所得をもとに、確定申告書で納める税金を計算します。個人事業主が白色申告を選択する理由としては、「青色申告は難しそう」とか「青色申告承認申請書を期限までに提出しなかった」といったものが多いです。
では、白色申告と青色申告の違いはどこにあるのでしょうか。以下の項で解説します。
白色申告と青色申告のおもな違いは次のようになります。
|
白色申告 |
青色申告 |
事前の申請 |
不要 |
必要 |
所得 |
すべての所得 |
不動産所得・事業所得・(山林所得) |
帳簿の記帳方法 |
単式簿記 |
複式簿記(10万円控除は単式簿記) |
会計処理 |
発生主義 |
発生主義 |
帳簿の保存義務 |
あり |
あり |
青色申告の特典 |
なし |
あり |
提出書類 |
収支内訳書 確定申告書B |
青色申告決算書 確定申告書B |
違いを順に見ていきましょう。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/h28/10.pdf
事業開始の日から2か月以内、または青色申告をしようとする年の3月15日まで(開業1年目は開業後2か月以内)に青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
しかし、初めてのことなので、気づけば期限を過ぎているということがよくあります。この場合、開業1年目は白色申告しかできません。
1年目の確定申告の際、一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出すれば、2年目から青色申告をすることができます。
事業所得 |
卸売業、小売業などの商業・製造業、建設業などの工業・農業・漁業・作家、フリーランスなどの自由業など、事業から生じる所得をいいます。 |
不動産所得 |
土地・建物、土地の上に存する権利、船舶、航空機の貸付けなどから生じる所得をいいます。 ※不動産売買業は事業所得になります。 |
利子所得 |
公社債や預貯金の利子、公社債投資信託の収益の分配などから生じる所得をいいます。 |
配当所得 |
株式や剰余金、投資信託などの配当などの所得をいいます。 |
給与所得 |
給料・賞与などの所得をいいます。 |
退職所得 |
退職によって受ける所得をいいます。 |
山林所得 |
山林を伐採して売ったり、又は立木のまま売った所得をいいます。 ※5年超所有していたものに限る |
譲渡所得 |
事業用の固定資産などを売った所得をいいます。 |
一時所得 |
一時的な収入(賞金や懸賞金など)や生命保険の一時金などの所得をいいます。 |
雑所得 |
他の所得にあてはまらない所得。年金や恩給などの公的年金等、原稿料や印税、講演料などの所得をいいます。 |
白色申告は上記すべての所得が該当しますが、青色申告は事業所得、不動産所得、山林所得のみです。
確定申告をするためには、日々の取引を帳簿付けする必要があります。
原則、白色申告は単式簿記、青色申告は複式簿記で記帳します。
(1)単式簿記
単式簿記とはお金がどのように動いたか。その目的のみを記載する方法です。現金や普通預金などの支払った手段は記載せず、「消耗品費」や「雑費」などの目的のみを記載します。
つまり、売上や経費などの損益の科目のみを記載する方法です。
(2)複式簿記
複式簿記とは簡単に言うと「何を」「何に使ったか」の両方を記載する方法です。単式簿記にくらべて記載する項目が増えています。
「何を」に当たるのが「現金」や「普通預金」、「何に使ったか」に当たるのが「消耗品費」や「雑費」などです。
複式簿記は「損益科目」だけでなく、「現金」などの資産や負債の「貸借科目」も記載する必要があります。
①「請求書とともに商品を得意先に引き渡し」、②「翌月通帳に入金された」とします。
発生主義は①の商品を得意先に引き渡した時点で売上を帳簿に付けることをいいます。現金主義は②の入金された時点で売上を帳簿に付けることをいいます。
白色申告は現金主義、青色申告は発生主義と思っている人も多いのですが、実は白色申告、青色申告ともに「発生主義」で処理しなければなりません。
現金主義を選択できるのは、所轄税務署に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を提出し、認められた場合のみです。
青色申告は以前より帳簿等の保存義務がありました。一方、平成25年まで白色申告は、一定の所得がある場合を除いて帳簿等の保存義務はありませんでした。しかし、平成26年1月から白色申告をするすべての個人事業主に帳簿等の保存が義務付けられました。白色申告での帳簿等の保存期間は、次のように決まっています。
保存が必要なもの |
保存期間 |
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帳簿 |
収入金額や必要経費を記載した帳簿 |
7 年 |
業務に関して作成した上記以外の帳簿 |
5 年 |
|
書類 |
決算に関して作成した棚卸表その他の書類 |
5 年 |
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、 領収書などの書類 |
※「収入金額や必要経費を記載した帳簿」とは売上帳や仕入帳、総勘定元帳などです。
※「業務に関して作成した上記以外の帳簿」とは、毎日の売上などをエクセルで管理し、月ごとの合計金額を売上帳に帳簿付けしている場合はそのエクセルシートなどが該当します。
白色申告と青色申告では提出書類がちがいます。どちらも、納める税金を計算するための「所得税確定申告書B」を作成・提出する点は同じです。しかし、事業の所得がいくらかを求める書類は、白色申告は「収支内訳書」、青色申告は「青色申告決算書」を提出します。
白色申告のメリットとデメリットは次のとおりです。
|
メリット |
デメリット |
事前準備 |
必要ないので手間がない |
|
日々の取引の帳簿付け |
単式簿記なので簡単 |
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青色申告の特典 (青色申告特別控除、赤字の3年間繰越、家族の給与を経費にできる=青色事業専従者給与) |
なし ただし白色専従者控除が受けられる |
青色申告特別控除が使えない 赤字の3年間繰越ができない 家族の給料を経費にできない |
白色申告は、事前準備の手間や単式簿記での記帳など、青色申告よりもハードルは低くなっています。しかし、節税効果の高い青色申告の特典を受けることができません。
そのかわり「白色専従者控除」が受けられます。
ここで、「白色専従者控除」と青色申告の特典の1つである「青色事業専従者給与」の違いを見ていきましょう。
所得税では家族は1つという考え方が基本にあります。そのため、家族に対する給料は経費にすることができません。
ただし、青色申告をしている場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄税務署に提出しているなどの一定条件のもと、家族に支払った給料を「青色事業専従者給与」として経費にすることができます。
青色事業専従者給与は青色申告の特典のため、白色申告にはありません。
では、白色申告の場合、事業を手伝ってくれている家族に対して何もないのでしょうか。
実はあります。それが「白色事業専従者控除」です。
白色事業専従者控除とは、家族に対する給料を経費にするかわりに、決まった一定額を経費にできるというものです。
白色専従者控除の金額は所得によって変わることがありますが、目安として配偶者の場合は86万円、配偶者以外の家族の場合は1人につき50万円です。
ただし、①15歳以上であること ②6か月超の期間、事業に専ら従事していること ③確定申告書にこの控除を受ける旨やその金額など必要な事項を記載することが条件です。
ここでは白色申告の提出書類について見ていきます。
白色申告で提出に必要な書類は「収支内訳書」と「所得税確定申告書B」です。
【収支内訳書】
1枚の用紙で裏表になっておりそれぞれ表面と裏面ともに記載箇所があります。
表面…おもに売上や経費などの損益金額を記載するところです。該当がある個所のみ記載します。
①住所・氏名・職業・電話番号などの個人情報 |
②売上、仕入、経費、利益(所得) |
③給料賃金の明細 |
④税理士・弁護士への支払いの明細 |
⑤事業専従者の氏名など ※白色事業専従者控除を受けるために必要 |
裏面…おもに売上先、仕入先、減価償却費の明細を記載する面です。該当がある個所のみ記載します。
①売上先とその取引金額 |
②仕入先とその取引金額 |
③減価償却費の明細 |
④支払った地代や家賃の明細 |
⑤借入金に対して支払った利息の明細 ※金融機関等以外のもの |
⑥災害や取引先の倒産にあったなど、本年におこった特殊事情 |
【所得税確定申告書B】
所得税確定申告書Bは通常 第一表と第二表を提出します。
・第一表…税金の計算をするための表です。
①収入と所得(もうけ)
②生命保険料控除や地震保険料控除、配偶者控除や扶養控除などの所得控除
③住宅借入金控除などの税額控除を記載
④納める税金の計算を次のようにします。
・(①所得-②所得控除)×税率=税額
・ 税額-③税額控除=④納める税金
・第二表…第一表の内訳を記載します。
①いろいろな所得があったとき、その所得の内訳
②所得控除の内訳(保険会社にいくら支払ったなど)
③事業専従者の氏名や控除額などを記載します。
確定申告の提出期限は翌年2月16日~3月15日です。住所地の所轄の税務署に提出します。白色申告は事前の届け出も必要なく、青色申告より帳簿付けも簡単です。
その分、特典は少ないですが、白色専従者控除などがあります。白色申告のメリット、デメリットを考慮し確定申告に備えましょう。