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覚えておきたい、白色申告にも必要な単式簿記の記帳方法

◆白色申告に必要な簡単な帳簿づけ・領収証等の保存について

個人事業主は1月1日~12月31日までの収益・費用、所得や税額を、翌年の2月16日~3月15日の間に確定申告する必要があります。

確定申告には、白色申告青色申告があります。一般的に青色申告のほうが得といわれていますが、白色申告をしている人も結構多いです。それは、青色申告をするための届け出(青色申告承認申請書)を提出期限までに出し忘れたり、白色申告に比べて青色申告のほうが記帳の方法が複雑なので、記帳方法の簡単な白色申告を選ぶ人が多いからです。

しかし、白色申告であっても、帳簿の記入や書類等の保存は必要です。ですが白色申告で必要とされている単式簿記はそれほど複雑ではありませんし、簡易的な記入も色々と認められていますので深刻に悩む必要はありません。

ここでは、白色申告の記帳方法や、保存が必要な帳簿や書類などを見ていきましょう。

・白色申告は簡単な単式簿記をつければOK
・単式簿記は「どういうお金が動いたのか」だけを目的にした帳簿
・単式簿記のポイントは「いつ・誰に・何を・いくらで」
・実際にお金が動いた日を基準にしていいので日付を心配しなくていい
・同日の取引は1日の合計金額で省略もできる

上のような点が単式簿記のポイントです。内容的にはお小遣い帳や家計簿とさほど変わらないので難しく考える必要はありません。

個人事業主やフリーランスの方はこの機会にざっくりとでもマスターしておくをおススメします。

 

◆個人事業主で確定申告をしなければならない要件

後で説明する記帳や保存書類にも関係がありますので、まず初めに個人事業主で確定申告をしなければならない人の要件を見ていきましょう。

実は、収入があるすべての個人事業主に確定申告が義務づけられている、というわけではありません。確定申告すべきかどうかは、「納める税金」があるかないかで決まります。

納める税金がない人は確定申告をしなくてもよいことになっています。

例えば、赤字の人や所得より社会保険料などの控除が多い場合は、納める税金がないため確定申告しなくてもよいのです。ただし、フリーランスの方などで事前に税金が差し引かれており、医療費控除などがある場合で確定申告をすると税金が戻ってくる場合は、確定申告したほうがよいでしょう。

 

◆記帳・帳簿等の保存制度

以前、白色申告の場合は、前年分の事業所得等の金額が300万円を超えた場合のみ、記帳と帳簿書類の保存が必要でした。しかし、平成26年1月からは前年の所得金額に関係なく、事業を行うすべての人に記帳と帳簿書類の保存が義務付けられました。そのため、納める税金がないため確定申告しなくてもよい人も、記帳や帳簿書類の保存が必要です。注意してください。

記帳とは、売上や仕入、経費などの取引を帳簿に記載すること。帳簿書類の保存とは、帳簿と書類の保存のことです。帳簿とは取引を記載した帳面のことで、書類とは請求書や領収書などのことです。

 

◆記帳内容と記帳方法

ここでは、帳簿にどのような内容を記載するのか、またどのような方法で記帳するのかを解説します。

1) 記帳内容

売上や仕入、経費などの取引は帳簿に記載しなければいけません。原則として、以下のような内容を記載することになっています。

・いつ・・・・ 取引の年月日

・誰に・・・・ 売上先や仕入先などの名称

・何を・・・・ 販売や購入した商品名など

・いくらで・・ その金額

白色申告の場合は、簡易な方法で記載してもよいことになっています。簡易な方法での記載方法を詳しく見ていきましょう。

1 売上  

日付、売上先、それぞれの金額と日々の売上の合計金額を記載します。ただし、次の場合は簡易な方法で記載できます。

① 現金売上で少額な場合は、日々の合計金額のみを一括で記載します。

② 主に小売業の現金売上については、日々の合計金額のみを一括で記載します。

③ 内容が確認できる納品書控、請求書控等を保存している場合は、日々の合計金額

  のみを一括で記載します。

④ 内容が確認できる納品書控、請求書控等を保存している場合で掛売上の場合は、 実際に売り上げたときの仕訳を省略し、売掛代金が入金されたときに現金売上として記載します。しかし年末だけは、実際に売り上げたときに売上を記載します。

⑤ 販売する商品を自分で消費した家事消費等については、その都度の記載はせず、年末において、種類別に合計金額のみを一括で記載します。

 

2 雑収入

 日付、内容、相手先、金額を記載します。ただし、次の場合は簡易な方法で記載できます。

① 少額な雑収入については、その内容ごとに、日々の合計金額のみを一括で記載します。

② 雑収入の発生と入金が別の場合、現実に入金した時に雑収入として記載することもできます。この場合には、年末に調整が必要で、未収のものは雑収入の金額をプラスし、前受のものはマイナスします。

 

3 仕入 

日付、仕入先、それぞれの金額と日々の売上の合計金額を記載します。ただし、次の場合は簡易な方法で記載できます。

① 現金仕入で少額な場合は、日々の合計金額のみを一括で記載します。

② 内容が確認できる納品書、請求書等を保存している場合は、日々の合計金額のみを一括で記載します。

③ 内容が確認できる納品書、請求書等を保存している場合で掛仕入の場合は、実際に仕入れたときの仕訳を省略し、仕入代金を支払ったときに現金仕入として記載します。しかし年末だけは実際に仕入れたときに仕入を記載します。

 

4 経費

給料、外注工賃、減価償却費、貸倒金、地代家賃、利子割引料、その他の経費の科目に区分し、日付、内容、相手先、金額を記載します。ただし、次の場合は簡易な方法で記載することができます。

 ① 少額な費用については、その科目ごとに、日々の合計金額のみを一括で記載します。

 ② 経費の発生と支払いが別の場合、現実に支払いした時に記載します。この場合には年末に調整が必要で、未払のものは経費の金額をプラスし、前払のものはマイナスします。

簡単に解説すると、

1.同じ日付のものは合計金額で記載できます。

日付

金額

5月10日

100,000円

5月10日

150,000円

5月10日

90,000円

340,000円

     ↓

日付

金額

5月10日

340,000円

 

 

2. 掛売上や掛仕入は、年度中は入金(支払)ベースで、年度末に調整

日付

売上

金額

摘要

9月20日

A商店

100,000円

 

10月20日

B商店

150,000円

 

11月20日

A商店

90,000円

 

12月20日

C商店

120,000円

 

12月31日

B商店

200,000円

翌1月20日入金分

9月20日~11月20日は実際の入金日で記帳。12月は12月20日の入金日と12月31日に12月売上、翌1月入金分の2回を記帳。翌1月20日は記帳する必要はありません。

 

2)記帳方法

ここからは記帳方法を見ていきましょう。

帳簿を記帳する方法は、単式簿記複式簿記があります。原則、白色申告は単式簿記を、青色申告は複式簿記を使って記帳します。ここでは、白色申告で使う単式簿記について確認します。

単式簿記とはお金がどのように動いたか。その目的のみを記載する方法です。「何が入金されたか」「何に使ったか」を記載します。

例)1月10日にA商店に商品300,000円を現金で販売した。

   1月20日にB商店から仕入商品150,000円を現金で買った。

  2月20日にパソコン90,000円を現金で買った。

  3月10日にごみ袋1000円を現金で買った。

この場合、「何が入金されたか」「何に使ったか」が重要のため、入金された、または使った科目のみ記載します。


単式簿記の記載例

日付

勘定科目

金額

摘要

1月10日

売上高

300,000円

A商店

1月20日

仕入高

150,000円

B商店

2月20日

消耗品費

90,000円

パソコン

3月10日

雑費

1,000円

ごみ袋

つまり売上や経費などの損益の科目のみを記載する方法です。

現金などの資産や負債科目は記載しません

※ちなみに複式簿記は、損益の科目だけでなく、現金などの資産や負債の科目も記載する方法をいいます。

 複式簿記のだと以下のとおりです。

日付

借方科目

金額

貸方科目

金額

摘要

1月10日

現金

300,000円

売上高

300,000円

A商店

1月20日

仕入高

150,000円

現金

150,000円

B商店

2月20日

消耗品費

90,000円

現金

90,000円

パソコン

3月10日

雑費

1,000円

現金

1,000円

ごみ袋

単式簿記にくらべて記載する項目が増えています。単式簿記のほうが記帳は簡単ですね。

 

◆4.帳簿・書類の保存期間

前述したとおり、白色申告は帳簿や書類の保存義務があります。それぞれ、次のように保存期間が決まっています

保存が必要なもの 保存期間
帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) 7年
  業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) 5 年
書類 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 5 年
  業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、 領収書などの書類  

「帳簿」とは、単式簿記という記帳方法で売上や仕入、経費などの取引を記載したものです。

<収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)>

売上や仕入、経費などを記載したものです。法定帳簿と呼ばれ、必ず作成する必要がありますが、帳簿の様式等は決まっていません。例えば、売上帳や仕入帳、経費帳などです。


<業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)>

業務に対する取引を記載したもので、上記以外のものです。任意帳簿と呼ばれ、必要に応じて作成します。例えば、売掛帳や買掛帳、固定資産台帳などです。

「書類」は、帳簿に取引を記載する際の元となったもので、年度末の棚卸をしたときに記載する棚卸表や、請求書・領収書などです。こちらは5年間保存する必要があります。

 

◆領収書の保管方法

1年間で最も多い数の書類は領収書です。では、領収書の保管はどのようにすればいいのでしょうか。ここでは、領収書の保管方法を見ていきます。

領収書の保管方法は次の2つの方法があります。

①紙で保管

基本的な保管方法です。お店などで受け取った領収書をそのまま紙で保管します。どのような方法で保管しないといけないのかは、厳密には決まっていません。

代表的なものとしては月ごとに白紙に貼り付け、綴りのようにして保管する方法や、少量であれば月ごとの封筒を用意しそこに保管する方法などがあります。

②スキャナ保存

あらかじめ所轄の税務署に「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存の承認申請書」を提出し、承認を受けることが必要です。領収書をスキャナで読み込んで電子データとして保存することが認められています。

※タイムスタンプを押せるなどの一定要件があります。申請書はスキャナ保存をしようとする月の3か月前までに提出する必要があります。

税務署に確定申告書を提出するとき、領収書は一緒に提出しません。そのため、保管が必要です。保管期間が5年と長いため、紙での保管は容量が大きくなってしまいます。

スキャナ保存には一定の要件がありますが、領収書がかなりの量になる場合はスキャナの導入を検討してもよいかもしれません。

今は、白色申告であっても記帳と帳簿書類の保存義務があります。適切な記帳方法と保存期間、保存方法を守り、書類などを紛失しないようにしましょう。